不況 貸しはがし急増…中小企業悲鳴
不況 貸しはがし急増…中小企業悲鳴
11月7日0時4分配信毎日新聞拡大写真各地の地方経済産業局の「中小企業金融貸し渋り110番」には、ひっきりなしに相談の電話がかかってくる=さいたま市中央区の関東経済産業局で2008年11月6日午後3時39分、武市公孝撮影米国の証券会社「リーマン・ブラザーズ」の破綻(はたん)が報じられた直後の9月下旬、神奈川県内の住宅建築会社に商工ローン大手のSFCG(旧商工ファンド)から封書が届いた。中に入っていた一枚の通知を読んだ男性社長(68)は目を疑った。「貸金全額を即時一括返済して頂かなくてはなりません」と書かれていた。追加担保を求める文言もあった。男性が会社を設立したのは10年前。なかなか業績は伸びず、債務超過が続く中、03年に受注したリフォーム工事の代金が未払いになった。仕事を依頼した職人に金を払わなければ信用にかかわる。銀行に融資を断られ、やむなく年利27%の高利でSFCGから借りた。SFCGは過剰な貸し付けや強引な取り立てが批判され、99年には社長が参院で証人喚問されている。だが、選択の余地はなかった。借り入れ総額は約600万円に上ったが、契約通りに利息を払い続けた。支払い遅延は一度もないはずだ。突然の返済要求の背景に何があるのか。世界的な金融不安と不動産市況の悪化、そして法改正による上限金利の引き下げ。厳しい経営環境の中、SFCGは「信用状態を調べ、貸し倒れリスクがあると判断すれば、追加担保を求める。違法ではない」と説明する。東京都によると、約4万の顧客や保証人に文書が送られ、その一部は「違法な貸しはがし」と提訴した。10月に入ると、男性の会社に再び通知が届いた。「法的手続きに着手しました」。SFCGの窓口を訪ねても担当者は不在と言われ、具体的な説明も聞けないまま「生命保険証券のコピー」を提出するよう要求された。自分以外に専務とアルバイトが1人。売り上げが1億円を超え、ようやく黒字を確保した年もあったが、今期は売り上げ減を覚悟している。会社の近くに2人で暮らす妻には、経営のことは詳しく話していない。事務所の壁に張られた自社の注文住宅のチラシを指して男性は言った。「円高だ、株安だという時に、家を建てようと思う人は簡単には見つからない」7~9月に金融庁の相談電話に寄せられた貸し渋り・貸しはがしに関する苦情、相談は103件。前年の同じ時期の約2.5倍に急増した。「特定の業者に限らず、金融機関全般で審査が厳しくなっている」と担当者はみる。山一証券が破綻した翌年の98年、旧大蔵省は本格的な貸し渋り対策を発表した。あれから10年。今も中小企業は苦境にある。政府は「資金繰り対策に30兆円」と支援策を打ち出した。「本当に苦しい会社にどれだけ金が行き渡るのか」。男性には、債務超過に陥った企業に融資してくれる銀行があるとは思えない。「あなたのせいです。あなたのせいで、つぶれてしまいます。責任を取ってください」10月末、男性の保証人になってくれた専務の家族の留守番電話に、男の声でメッセージが吹き込まれた。保証人がきちんとしないと男性の会社が倒産してしまう--とも受け取れる内容だった。「嫌がらせか」。重く沈んだ気分のまま、男性は知人に資金繰りを相談する毎日を送っている。
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